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札幌高等裁判所 昭和57年(ラ)9号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二当裁判所の判断

本件記録、職権で取寄せた釧路地方裁判所昭和五四年(ワ)第二七号、同年(ワ)第四五号農業協同組合総会決議無効確認(本訴)同決議有効確認請求当事者参加事件、札幌高等裁判所昭和五七年(ネ)第九二号仮処分異議控訴事件の各記録、調査嘱託に対する釧路地方法務局標茶出張所長回答書及び当庁裁判所書記官西宮龍二作成にかかる昭和五七年四月二三日付、同じく裁判所書記官菊池農作成にかかる昭和五七年五月七日付各電話聴取書によれば、次の事実を認めることができる。

本件再審訴状を受理した原審裁判長は、昭和五六年七月一七日再審訴状中に、再審被告標茶酪農専門農業協同組合(以下「再審被告組合」という。)の代表者の記載がないので、命令送達の日から七日以内にその欠缺を補正するよう命じ、右命令は同月二四日抗告人に送達された。そこで抗告人は昭和五六年七月二七日付補充書をもつて、再審被告組合の代表者を清算人職務代行者門屋盛吾と補正したところ、原審裁判長は昭和五六年一〇月六日再度抗告人に対して命令送達の日から七日以内に再審被告組合の代表者を補充するよう補正を命じ、右命令は同月二四日抗告人に送達された。抗告人は昭和五六年一〇月二九日付で債権者門屋盛吾、債務者南彦一、堀井司間の釧路地方裁判所昭和五四年(ヨ)第四号清算人職務執行停止仮処分申請事件(以下「五四年(ヨ)第四号事件」という。)の同年一月一七日付仮処分決定正本を添付した補充書をもつて再審被告組合の代表者を清算人職務代行者門屋盛吾と補正した。右門屋盛吾は債権者伊藤四郎・債務者大井浩(抗告人)間の釧路地方裁判所昭和五三年(ヨ)第八五号清算人職務執行停止等仮処分申請事件(以下「五三年(ヨ)第八五号事件」という。)において同年一一月四日付仮処分決定により、右伊藤四郎から再審被告組合に対する総会決議無効確認請求事件の判決確定に至るまで右組合の清算人の職務代行者に選任されて就任していたが、更に五四年(ヨ)第四号事件において同年一月一七日付仮処分決定により債権者門屋盛吾から再審被告組合に対する総会決議無効確認請求事件の判決確定に至るまで債務者堀井司、同南彦一が右組合の清算人の職務執行を停止され、かつその期間中、門屋盛吾は右組合の清算人の職務代行者に選任され(右決定は債権者および職務代行者である門屋盛吾については同日、債務者である南彦一については同年一月二〇日、同じく堀井司について同年一月一九日いずれも送達された。)、そして五三年(ヨ)第八五号事件の本案判決(釧路地方裁判所昭和五四年(ワ)第二七号、同年第四五号事件)は、昭和五五年九月二七日確定したが、五四年(ヨ)第四号事件については昭和五四年一〇月一二日債務者堀井司、同南彦一から右仮処分決定に対する異議の申立がなされた(釧路地方裁判所昭和五四年(モ)第二五五号事件)。抗告人は、昭和五六年一一月一三日に至り、同月九日付認証のある再審被告組合の商業登記簿謄本を添付した補充書をもつて右組合の代表者を清算人堀井司と補正した(なお、抗告人が右のように補正したのは、右登記簿謄本の役員に対する登記事項中、清算人南彦一、同堀井司の職務執行停止の部分と清算人の職務代行者門屋盛吾の部分が抹消されていたため抗告人は、右堀井司において右組合の代表権を回復したものと解したからであろう。)。そこで、原審裁判長は、昭和五七年一月一四日付命令をもつて抗告人が最終的に再審被告組合の代表者として補正した清算人堀井司は釧路地方裁判所が昭和五四年(ヨ)第四号仮処分決定により、その職務執行を停止されている者であることを理由に、欠缺の補正がなされなかつたものとして本件訴状中、再審被告組合に関する部分を却下した。

ところで、前記の登記簿謄本には、再審被告組合の清算人南彦一、同堀井司は昭和五四年一月一七日釧路地方裁判所の決定により清算人の職務執行を停止され、清算人の職務代行者として門屋盛吾を選任する旨の登記が昭和五六年三月二八日になされ、右登記はいずれも抹消されている。

しかし右職務執行停止・代行者選任の仮処分については、農業協同組合法にはこれを登記すべき明文の規定がないので本来登記すべきではなかつたものを登記官が誤つて登記していたから、右職務執行停止の登記は、昭和五六年一一月九日抹消登記され、ついで清算人の職務代行者門屋盛吾選任の登記は五三年(ヨ)第八五号事件の本案判決の確定(昭和五五年九月二七日)によつて清算人伊藤四郎の資格を回復したことにより職権によつて抹消されたものである。また五四年(ヨ)第四号事件の仮処分決定に対する異議事件(釧路地方裁判所昭和五四年(モ)第二五五号事件)については、昭和五七年三月五日、同裁判所において右仮処分決定を認可する旨の判決がなされたが、同月二四日債務者南彦一、同堀井司から控訴の申立がなされ(札幌高等裁判所昭和五七年(ネ)第九二号事件)同裁判所第二部に係属しており、右事件の本案事件は釧路地方裁判所昭和五四年(ワ)第四二号事件として同裁判所に係属中である。

以上の各事実を認めることができる。

以上の認定事実によれば、抗告人が原審の昭和五六年七月一七日及び同年一〇月六日付の各補正命令に対し、いずれも再審被告組合の代表者として補正した清算人職務代行者門屋盛吾は、五三年(ヨ)第八五号事件において同年一一月四日付仮処分決定により右組合の清算人職務代行者に選任されたが、右事件の本件判決が昭和五五年九月二七日に確定したことによつて同人は右事件としては清算人の職務代行者の地位を喪失したものといえるが、五四年(ヨ)第四号事件の同年一月一七日付仮処分決定により、債権者門屋盛吾から右組合に対する総会決議無効確認請求事件の判決確定に至るまで右組合の清算人の職務代行者に選任され、右仮処分決定は前記のように当事者に適法に告知されているところ、いわゆる職務執行停止・代行者選任の仮処分は仮の地位を定める仮処分であり、当事者に対して告知されることにより一定の法律関係を形成する効力を有しかつ第三者に関する関係においてもその効力は生じたものであり(最判昭和四一年四月一九日民集二〇巻四号六八七頁参照)単に当該事件についてのみの地位を定めたものではない。そして右仮処分決定が取消されていることが前記各記録から窺れずまたその本案事件も現在釧路地方裁判所に係属審理中であるから右門屋盛吾は右事件の本案判決確定に至るまで依然として右組合の清算人の職務代行者であるといわざるを得ない。

もつとも、本件再審の訴は、前記釧路地方裁判所昭和五四年(ワ)第二七号、同年(ワ)第四五号事件の確定に対するものであり、したがつてこの事件についてはもともと門屋盛吾は職務代行者としての地位を喪失している(したがつて伊藤四郎が再審被告組合の清算人の地位を回復していたことはもちろんである。念のため、同人は昭和五四年(ヨ)第四号事件において職務執行停止の仮処分を受けていない。)が、五四年(ヨ)第四号事件によつて職務代行者に選任されている以上、今なお前記釧路地方裁判所同年(ワ)第二七号、同年(ワ)第四五号事件についても職務代行者選任の効力は及ぶものである。そうすると抗告人は原審の補正命令に従い、再審被告組合の代表者を再度にわたり適法に補正したものと認めることができる。

なお、抗告人は最終的に右組合の代表者を清算人堀井司と補正し、本件訴状却下命令それ自体は必ずしも違法とはいえない面もあるようであるが、前記説述したところによれば抗告人が再度にわたつてした訴状の補正は正当なものであるにかかわらず原審裁判長がその点の判断を誤つたために最終的に右堀井司と補正したにすぎないのだから、その責任を抗告人に帰せしめるべきものではない(原審裁判長は、適正に補正せられた時をもつて本訴状が補正されたものとして取扱うのが相当であり爾後の補正手続について抗告人に対して改めて撤回の有無を確かめるのが相当である。)。

三よつて、原審裁判長が、命令所定の欠缺が補正されなかつたものとして、本件訴状中、再審被告組合に関する部分を却下した原命令は失当であるから、民事訴訟法四一四条、三八六条によりこれを取消すこととし、主文のとおり決定する。

(奈良次郎 藤井一男 喜如嘉貢)

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